2064 READ ONLY MEMORIESレビュー セクシャルマイノリティの夜明けのようなゲーム

レビュー

私は、レズビアンでセクシャルマイノリティ当事者です。

このゲームには、セクシュアルマイノリティの人々がたくさん登場しますが、みんなごく自然な存在として扱われ、奇異な目で見られることはありません。

プレイ中、「こんなゲームをずっと待っていた」と何度も口をついて出ました。

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2064 READ ONLY MEMORIESとは

朝目を覚ますと、見知らぬROMがデスクに腰かけている。名前を尋ねると、「チューリング」だという。

次に、なぜここにいるのかと尋ねると「自分を制作したヘイデンが襲われ、行方が分からなくなった。ヘイデンの友人リストを分析すると、助けてくれる可能性が最も高い人物があなただった。」と答える。

しばらく会ってない友人とはいえ行方不明と聞いて放ってはおけない。チューリングとともに友人の行方を捜すことになる…というストーリーです。

個人的に、このゲームの好きなところは3つあります。

いいところ
  • セリフがユニークで、遊び心に富んでいる
  • セクシュアルマイノリティの描き方がすばらしい
  • メッセージ性がある

セリフがユニークで、遊び心に富んでいる

2064 READ ONLY MEMORIESは、ポイント&クリック型アドベンチャーゲームです。下の画像のように、画面上のモノやヒトに対して「見る」「触る」「話しかける」「アイテムを使う」を選択します。

このゲームのテキストは、とてもユーモアが効いていると思います。

例えば、自室のラップトップに話しかけると「元気すぎて体が火照っているというか、オーバーヒートしているようだね。いつものように」と皮肉っぽいコメントをします。

アドベンチャーゲームにおいて、ユーモアセンスが光っていることは重要です。

プレイ中、一つのテキストも逃すまいと、植え込み、看板、ゲーム機など本筋に全く関係のないものを調べては、クスリとしていました。

また、進行には全く必要のない持ち物を登場させるという遊び心が好きです。

自宅で手に入れられる「腐った牛乳」は、何の意味もありません。人に見せれば「どうしてそんなものを持っているんだ?」と気味悪がられ、モノに対して使おうとすれば「そんなことをすべきではない」と自制します。

緊迫感が漂うシーンにも、良い意味でホッと一息つける良いアイテムです。

セクシュアルマイノリティの描き方がすばらしい

物語の最初のほうで、チューリングから「彼」や「彼女」などどのように呼ばれたいかと質問があります。

このゲームの原文は英語なので「あの人」はtheyの日本語訳で間違いありません。

Xジェンダーは、とにかく認知度が低いです。このゲームが開発されたアメリカでの認知度はわかりませんが、少なくとも日本では「Xジェンダー」や「ノンバイナリー」という言葉を聞いたことない人がほとんどでしょう。

セクシュアルマイノリティが当たり前にいる世界観だと感ぜられるこの質問は、自分自身はトランスジェンダーではないとはいえ嬉しかったです。

ほかにも、どう呼ばれたいかを尊重していることが伺える場面があって感動しました。

一つ、例をあげるとチューリングが「ミス・リバーズに会ってみましょう」と提案する場面があります。リバーズの古い知り合いである主人公は「リバーズ捜査官という呼び名に変えたほうがいい」と注意します。こんなゲームは滅多にありません。もう少しだけこんなゲームが増えてくれると嬉しいです。

セクシャルマイノリティが自然に扱われる

このゲームは、キャラクターのセクシュアリティをいちいち説明したりしません。

顕著なのは、シンパシーというキャラクターです。シンパシーにはヒゲが生えていて見た目は男性と言ってよいが、人称代名詞は「彼女」。ちなみに声は女性です。セクシュアリティは誰も触れないのでわかりません。

主人公は、シンパシーに対して戸惑いを見せることはなく、ごく単純に一人の人間として会話をするだけ。そのことに嬉しさと心地よさを感じました。

お気に入りのキャラクターはレクシー

このゲームの一番のお気に入りキャラクターはレクシーです。レクシーは主人公の姉の元恋人で、警察官です。正直ゲームプレイ前にイラストを見たときは男性だと思っていましたが、女性でした。ちなみに、上に書いたリバーズ捜査官とはレクシーのことです。

レクシーは、主人公の姉への未練がタラタラで、ことあるごとに「お前に何かあったら私はお前の姉さんになんて説明すればいい?」と危なっかしい主人公に釘をさしてきます。

そういった可愛げだけではなく、主人公の命を救うようなしっかりとかっこいいところも見せてくれます。そのギャップがたまらない。たぶんレクシーのことが嫌いな人はいないんじゃないかと思います。

メッセージ性がある

このゲームでは、ヒトとは何かを考えさせてくれる。

相棒チューリングは、おそらくこの世界で初めて自立して思考できる機械です。ネタバレになるので詳しいことは書けませんが、ストーリー序盤チューリングにとってとても悲しい出来事があります。

嘆き苦しむチューリングの痛ましい姿に思わず主人公は「そういう回路を遮断できないのか」と問います。

チューリングは「……できます。モジュールを無効化にすればよいので。でも感じたくない感情をすべてオフにしてしまったら、私は私ではなくなるのではないでしょうか?私が人間だったら、感情をカットするなんて絶対おかしいことだと思われるでしょう」と答えました。

この返答に、ハッとしました。このセリフを聞く前までは、チューリングのことを高性能な機械くらいにしか思っていませんでしたが、一変して人間と同じような存在だと認識するようになりました。

差別について

すでに書いたように、セクシュアリティに関する差別は存在しない世界観だ。じゃあ、差別がない世界なのか?と言われればそれは違います。

代わりにハイブリットという人々が差別を受けています。ハイブリットは、何らかの理由で動物や虫の遺伝子情報を移植している人々です。美容目的の人もいるし、病気の治療のために移植しなければならない人もいます。

メインキャラクターの一人に「ジェス」という猫のハイブリットのキャラクターがいます。彼女は皮膚がんの治療のために、ハイブリットにならざるを得なかった人物です。

主人公は、セクシュアリティに対しては一切バカにするようなことは言わないのに、ハイブリットに対してはからかうようなセリフを選べます。これには本当に驚きました。

ジェスは、今でこそネコの見た目をしていますが、皮膚がん治療直後は甲殻類のような皮膚を持っていたそうです。甲殻類のような皮膚だったときは、常に警察官に尾行され、住む場所も追い出されたと言っていました。どれだけ自尊心が傷つくか想像に難くありません。

また、ジェスの受けた遺伝子治療の度合いは、政府が定めた生殖を許可するレベルを超えていたために、卵巣を摘出されています。

仮に、遺伝子治療を受けることで異常に虚弱体質な子どもが生まれることが分かっているなら諦めるしかないのかもしれません。ゲーム内の人々の反応を見るに、未知に対する恐れから禁じているような印象を受けました。

ハイブリットは姿形が生まれとは違うだけで人間なのだから、当然人間の感情がある。だから、シンパシーやレクシーがセクシュアルマイノリティという色眼鏡を通さずに一個の人間として見られるように、ハイブリットも同じように見られるべきです。

マイノリティ同士であっても、別のマイノリティを人間として見ることを忘れて差別してしまうことがあります。相手にどんな背景があっても、一人の人間だということを忘れずにいたいと改めて感じました。

バグについて

自分がプレイしたのはSwitch版ですが、なかなかクリア後の後日談のストーリーを始められなくて困りました。

スタッフロール後、最終決戦直前に戻ってしまうというバグがあります。Twitterで検索したところ、同じように何人か困っている人を見かけましたが、解決策を書いている人はおらずしばらく頭を抱えていました。

スタッフロールを飛ばさずに全部見切ること2回。2回目でなんとかバグを回避できました。困っている人はスタッフロールを飛ばさずに見てみるとよいと思います。

steam版でバグが出たという話を聞かないので、steam版でやるのが一番良いのかもしれません。

まとめ

自分がセクシャルマイノリティ当時者だからこそ、少しでもステレオタイプなセリフを見るととても萎えます。

このゲームは、セクシャルマイノリティのことをよくわかっている人が作っていると思います。違和感を感じる場面は一度もなく、最後まで純粋に楽しんでプレイすることができました。

クリア(後日談含む)までにかかった時間は15時間程度。肩肘はらずに気軽にプレイできる長さだと思います。とても良いゲームなので、ぜひすぐにでもプレイしてほしいです。

後日談で読めるセリフ。このゲームの集大成とも言える、一番好きなセリフです。

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